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第13回日本免疫治療学研究会 学術集会
会長 遠藤 格

 第13回JRAI学術集会の当番世話人を務めさせていただく遠藤 格と申します。本研究会は平成15年に初回開催されて以来、10年以上にわたり続いてきました。この間、免疫細胞治療だけではなく、幹細胞研究、抗がん剤治療などに精通された演者による講演も多く企画され、基礎研究者、内科医、外科医が加わり最先端の集学的治療が討論されてきました。

 私は外科医として肝胆膵疾患、特に悪性腫瘍に対する外科手術に取り組んでまいりました。腫瘍免疫学とは縁がなかったのですが、肝細胞癌が針生検だけで自然退縮した症例や、治癒切除後10年以上無再発で経過しながら突然骨転移再発して患者を失うという経験をしますと自分の外科技術や抗がん剤治療だけでは計れないメカニズムが存在することを感じてきました。

 縁があって2007年に(株)メディネットと膵癌に対するGEM+LAK肝動注療法という前向き試験を行いました。GEMに免疫活性化作用があることや、免疫治療と化学療法の併用法を学ぶ良い経験となりました。現在、膵癌治療は術前化学放射線療法の時代となりました。私どもの教室でもBorderline resectable膵癌に対して前向き試験を実施しました。80%以上の症例が微小転移を有するいわゆる『全身病』であるはずの進行膵癌が、術前化学放射線療法を行うことによって3年生存率40%という良好な成績を示すのをみて大きな疑問が生じました。切除標本を観察しますと腫瘍の周囲にCD8、Tregが集簇し、CD8が多く集簇している症例は長期生存しています。

 このような現象は腫瘍免疫の知識があれば理解できますし、最近では免疫チェックポイント阻害剤の登場によって抗がん剤+放射線+ワクチン+免疫チェックポイント阻害剤という治療法も垣間見えるようになりました。このような状況から免疫治療への期待感が高まっているのを感じます。第12回JRAI学術集会は中山先生のもと281名という過去最多の参加者を数えました。第13回もこの上昇ムードをさらに維持し、さらなる参加者増を目指したいと思います。今回は「免疫が変える“がん治療の世界”」をメインテーマとし、基礎と臨床の融合による最先端のtranslational researchの知見が得られる場となることを期待しています。

 多数の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。