会長挨拶
第12回 日本免疫治療学研究会 学術集会
会長 中山 睿一
川崎医療福祉大学の中山睿一でございます。この度、第12回日本免疫治療学研究会学術集会を担当させて頂くことになりました。大変、光栄に存じております。本研究会理事の諸先生、また、運営にご尽力されてきた皆様に、心より感謝申し上げます。
我が国の医療分野の研究開発の仕組が大きく変わろうとしています。研究開発の中心となる健康・医療戦略推進本部が設置され、日本医療研究開発機構に予算を集約し、一体的に研究から臨床への研究推進を図るとのことです。また、再生医療新法及び改正薬事法が11月には施行されることになりました。この大きな動きの中で、免疫細胞治療も、これらの法律のもとで、透明性をもって実施が可能になると思われます。がんについては、ジャパン・キャンサー・リサーチ・プロジェクトが設置され、関係省庁の研究関連事業を基礎研究から実用化研究まで一体的に推進するとのことです。
がんの免疫治療に焦点を当てると、いわゆるがんワクチンから、T細胞移入療法、さらには、抗体療法とさまざまな治療法が試みられています。能動免疫療法としてのがんワクチンは簡便で治療法としては理想的ですが、単独では、一定の免疫誘導効果はあるものの有効性には限界があることがはっきりしてきました。受身免疫療法の一部の改変T細胞移入療法には、劇的な効果が認められていますが、効果の調節に問題があることが指摘されています。一方、最近の抗体療法の進歩には目を見張るものがありますが、企業治験主体で開発されていて、アカデミアの自由な研究参加が難しい状況です。いずれにしても、真に有効な治療法の開発のためにはまだまだ努力を積み重ねなければなりません。
本研究会では、このような研究環境の動きについても正しく情報発信し、適正な臨床試験の実施についての検討を行ってきております。第11回の谷会長の学術集会では、研究規制についてのテーマも取り上げられたところです。また、研究については、これまでどおり、基礎から臨床まで広くカバーし、今回は、免疫細胞の幹細胞化など新しい話題も注目されました。
免疫治療学のますますの発展のために、本会が、基礎研究から臨床現場まで、会員の皆様の情報あるいは意見交換の場となることを願っております。多数の皆様のご参加をお待ちしております。