会長挨拶

第11回 日本免疫治療学研究会 学術集会
  会長 谷 憲三朗

九州大学 谷 憲三朗この度、第11回日本免疫治療学研究会学術集会を担当させて頂きます、九州大学生体防御医学研究所・九州大学病院先端分子細胞治療科の谷憲三朗と申します。この度はこのような光栄な機会を頂戴致しましたことを、本会の運営に長年ご尽力されております諸先輩に心より感謝申し上げます。

悪性腫瘍はご周知の様に、日本人の死因の中で最も多く、3人に1人がそのために命を落とされる現状にございます。免疫療法は手術療法、化学療法、放射線療法に次ぐ、第四の悪性腫瘍治療法として期待されてきました。しかし臨床試験実施の困難さも伴い、免疫療法は薬剤としての承認を得ることなく長年が経過してきたことも事実です。漸く2010年4月29日に免疫細胞療法であるPROVENGE(Sipuleucel-T)が、無症候性もしくはわずかに症状が認められるホルモン療法抵抗性で転移性前立腺がん患者さんに、2011年3月25日にヒト単クローン抗体であるYervoy® (ipilimumab)が進行性メラノーマの患者さんに対して、米国FDA(Foood and Drug Administration)により承認されたことはまだ皆様の記憶に新しいことと思います。後者はその後、2012年2月1日にカナダで、2012年11月に欧州においても承認されました。このような世界の流れの中で日本においては、これら2薬剤は承認されてこそはいませんが、現在多くの免疫療法が臨床試験としてICH-GCPに則り実施されてきています。この数年以内にはその中のいくつかが、必ずや日本においても薬剤として承認されて行くものと期待されます。また、新たな免疫機構の解明が分子・細胞・免疫・再生医学の急激な進歩を基盤に、多くの国内外研究者により精力的に進められてきており、新たな免疫療法の創出に必ずや繋がっていくものと期待されます。

本研究会におきましては、新たな免疫療法の潮流を会員の皆様に感じて頂くことはもとより、新薬の開発および臨床試験実施を円滑に行っていく上で必須となる、いわゆる「レギュラトリーサイエンス」にも眼を向けさせていただき、今後の免疫治療学の健全かつ効率的な発展に向けた活発で実質的な意見交換の場となりますことを心より願っております。そして、我々がこれまで行って参りました地道な努力が、癌に苦しまれている多くの患者様にとっての新たな福音に必ずや成長していきますことを、心より祈念致します。会員の皆様の積極的なご参加を御待ち申し上げます。